工作機械のクーラントとは?役割や種類、選び方を徹底解説!

工業高校卒業後、工場のマシンオペレーターとして7年程勤務。その後、工作機械専門商社の営業に転職し現在4年目。ユーザー目線で現場主義の営業を意識しています。

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工作機械のクーラントの種類や役割を詳しく知りたいな。

このような疑問に対して、現役の工作機械商社の営業マンである僕が詳しく解説します!

工作機械のクーラントについて、色々な種類や呼び方がありますが、ここで整理しておきましょう!

クーラントとは?

クーラント(Coolant)とは、工作機械で金属を加工する際に使用される冷却液・潤滑液のことです。

切削加工や研削加工の際に、工具やワーク(加工対象)を冷却し、摩擦を減らし、切りくず(チップ)を除去する役割を果たします。

クーラントを適切に使用することで、工具寿命の延長、加工精度の向上、加工速度の最適化などが可能になります。

クーラント液?クーラント油?加工液?加工油?何が違うの?

色々な呼び方があって、現場の方でもそれぞれ呼び方が違うケースがよくあります。クーラントの役割は後述しますが、

クーラント=冷却させるための液または油

という大まかな認識で間違いありません。

僕の解釈としては、クーラントを油性と水溶性に分け、

油性のクーラント≒クーラント油、加工油、切削油、研削油

水溶性のクーラント≒クーラント液、加工液、切削液、研削液

という呼び方の認識で解釈しています。

(※油性と水溶性については後述します。)

使われる工作機械や、クーラントの種類で呼び方を変えていますが、意味合いとしては同じですね。

クーラントの主な役割4つ

それではクーラントの主な役割を4つに分けて見ていきましょう。

① 冷却作用

切削や研削の際、工具とワークの摩擦によって高温が発生します。クーラントを使用することで、熱を効率的に除去し、熱変形を防ぎます。加工精度にも影響してきます。

② 潤滑作用

クーラントには潤滑成分が含まれており、工具とワークの摩擦を軽減し、工具の摩耗を抑制します。

③ 切りくずの除去(洗浄作用)

加工中に発生する切りくずを洗い流し、加工面の品質を向上させるとともに、工具やワークへのダメージを防ぎます。

④ 防錆作用

水溶性クーラントには防錆剤が含まれており、機械やワークの錆びを防ぎます。特に鉄系材料の加工では重要な役割を果たします。

クーラントの種類と特徴

クーラントには複数の種類があり、それぞれ特徴があります。

1) 水溶性クーラント

水に希釈して使用するタイプで、冷却性能に優れています。主に大量の熱が発生する高速切削や研削加工に適しています。

水溶性クーラントの3種類

水溶性クーラントにはJISで定められた下記の3つの種類があります。

  • A1(エマルション):一般的な切削加工(旋盤・フライス盤・マシニングセンタ等)、潤滑性が必要な加工
  • A2(ソリュブル):研削加工や高速切削、冷却性が求められる加工
  • A3(ソリューション):研削加工(特に精密研削)、冷却重視の加工

これらのクーラント(切削液)の種類を整理すると、以下のようになります。

クーラント特徴潤滑性冷却性洗浄性
A1(エマルション)鉱物油を多く含む潤滑性能優れるが、べたつきがあり洗浄が必要高い中程度低い
A2(ソリュブル)浸透性と冷却性に優れるが、潤滑性はA1に劣る中程度高い中程度
A3(ソリューション)浸透性と冷却性に優れるが、基油を含まず潤滑性はほとんどないほぼなし非常に高い高い

水溶性クーラントのデメリットといえば、なんといってもニオイでしょう。水で希釈された水溶性クーラントは、時間が経過しバクテリアが増殖することでクーラントが腐敗したニオイを放ちます。

適切な濃度管理や定期的な交液をしないと、あのイヤ〜なニオイだけではなく、クーラント性能も悪化する為、工具の持ちや加工面や精度にも影響してきます。

ユーザーによっては、ほとんどニオイがしない会社もあれば、常にニオイがする会社もあり、工場に入るとすぐ分かりますね。

工作機械商社の営業マンの僕としては、ニオイが発生しているユーザーには、クーラントタンクの浮上油回収装置の提案やpH濃度計で管理の推奨、バクテリアの発生を抑えるファインバブル生成器の提案などを行っています。

案外、日頃働いている方はニオイに麻痺しているケースもありますからね。

適切なクーラント管理をしていきましょう。

続いて、油性クーラントの特徴を見ていきましょう。

2)油性クーラント

主成分が鉱物油や合成油で、高い潤滑性能を持ちます。主に高精度の切削加工に使用され、工具の摩耗を抑える効果が強いです。

油の原液を薄めずにそのまま使用するため、「ストレートオイル」とも呼ばれます。

油性クーラントの2種類(活性形と不活性形)

油性クーラントには、「活性形」と「不活性形」の2種類があり、それぞれ異なる特性を持ちます。

主に極圧添加剤を含むものを「活性形」、含まないものを「不活性形」に分けられます。それぞれの特徴を表にまとめると以下のようになります。

項目活性形不活性形
主な添加剤活性硫黄不活性硫黄(または無硫黄)
極圧性能高い(硫化被膜を形成する)やや低い
摩擦・摩耗防止強力中程度
非鉄金属(アルミ・銅)への影響変色・腐食のリスクあり変色・腐食なし
適用材料鉄鋼、ステンレス、チタン、インコネルアルミ、銅、真鍮、マグネシウム
主な用途重切削、難削材加工、歯切り、ねじ切り精密加工、航空機部品、食品・医療機器
におい強い(硫黄臭あり)少ない
作業環境硫黄臭が気になる場合ありにおいが少なく快適

前述したように、油性クーラントは高い潤滑性能を持ちますが、水溶性クーラントに比べ発火の可能性がある為、火災対策が必要になります。 

対策例:

  • 自動消火装置
  • ミストコレクター
  • オイルコン

また、切込量や送りを攻めすぎた加工条件や、加工点にクーラントが適切にかかっていない場合も、発熱から発火に繋がるケースになります。

注意点を理解した上で、油性クーラントを使用した加工や管理をしていく必要があります。

5. まとめ

クーラントには、水溶性クーラントと油性クーラントがあり、それぞれ種類と用途がありました。

①水溶性クーラント

  • A1(エマルション):潤滑性が必要な一般的な切削加工
  • A2(ソリュブル):潤滑性も冷却性も必要な、高速切削加工や研削加工
  • A3(ソリューション):冷却性重視の精密研削加工

②油性クーラント

  • 活性型:極圧添加剤含む。鉄系材質向け。歯切りなどの重切削向き。難削材向け。
  • 不活性形:極圧添加剤含まない。アルミ・銅等の変色腐食がある材質向け。

それぞれの特性を理解し、加工するワーク材質や用途に応じて選ぶことが重要です。

基本は工作機械ごとに推奨クーラントの種類が明記されていますので、まずは遵守したい所です。

最適なクーラントを検討し、加工品質の向上と工具寿命の延長を図りましょう!

それでは、また!

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